*このレポートは、「メディアミックスによるNPO・ボランティア広報事業」(宮崎県社会福祉協議会委託事業) の一部です。
【お話】国際ビフレンダーズ宮崎自殺防止センター
センター所長:甲斐妙子さん
1人が自殺すると、その家族や友人、職場の同僚など5〜10人が深い悲しみや強いショックなど、何らかの影響を受けると言われています。
年間自殺者数が10年以上300人を超える本県では、毎年1,500〜3,000人が影響を受けていることになります。


◆設立のきっかけは・・・
 私たちの住む宮崎県は、現在全国有数の自殺多発県であり、最近その現状は広く県民にも周知浸透してきています。自殺率が高いのに、宮崎に「いのちの電話」がないということもありました。平成18年12月に宮崎県の高い自殺率をどうにかしたいと個々に活動していた団体の代表が集まり、「宮崎自殺対策研究会」を設立しました。世界的には、ロシアが一番高く、日本が2番目です。
 「いのちの電話」が電話だけで、そこから先のアプローチがないという現実を踏まえて研究会では、電話・面談・遺族のつどい・講演会など包括的な支援をする「国際ビフレンダーズに加盟した自殺防止センター」を宮崎に創ろうと決めました。

 「苦悩」「絶望」「抑うつ」「悲嘆」等を抱え、悩み・苦しみ、自殺の意志を示す人たちに対し、感情面への支えや支援を行い自殺防止を図っていくために、「NPO国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター」の応援で翌19年の2月に西原由記子・明氏を講師に迎え、ボランティア相談員第1期養成研修を開始しました。平成19年4月に拠点を構え「宮崎自殺防止センター」へ団体名を変更しました。
そして、そのボランティア相談員の人たちと、6月から日曜夜の「電話相談」を開設し、10月にNPO法人格を取得しました。

◆主な活動は?
理事長 三山吉夫氏(宮崎大学医学部名誉教授・大悟病院老年期精神疾患センター長)
 
19年10月3日NPO法人化記念講演会
 
西原由記子さんの講演
 
東国原知事訪問(三山理事長と)
 
HP担当の岩切文代さん(中央)
 
センター所長甲斐妙子さん
 

 主な活動は以下のようなもので、メインは電話相談です。
(1)自殺予防電話相談
(2)自死遺族のわかちあい「ランタンのつどい」
(3)啓発イベント
(4)こころの疲れた人が集まるサロン(準備中)
(5)電話相談員研修(専門・一般)

自殺予防電話相談は、毎週 日曜日・水曜日・金曜日の午後8時〜11時まで受け付けています。電話番号は、0985−77−9090です。
 自殺を考えている人々、苦悩状態にある人々に、「聴くこと」に精力を傾けて、感情的な支えを提供します。ビフレンダーとは「相談員」のことで、コーラーは「電話をする人」です。これまでに52人育成して、16人がボランティアに登録しています。1日に活動しているのは、3〜5人です。1日平均12人程度の相談があります。
 電話相談が中心ですが、必要な場合は緊急出動による救援活動にもあたります。またボランティアには守秘義務がありますので、相談の秘密は守られます。

 終わって帰るときは、『電話の内容が重い』ということもあって、相談員同士で、相談した内容を分かち合って帰ります。お互いに支え合い“こころの荷物”を降ろして帰るということです。
 
自死遺族のわかちあい「ランタンのつどい」は、大切な方との思い出やあなたのお気持ちをわかち合う場です。ご遺族同士が出会い安心して語り合い、寄り添う場です。
 原則として偶数月の第2土曜日、午後2時から午後4時まで宮崎市内で開催しています。
会場は、無料の場所を探して行っています。当日の会場(宮崎市内)については、こちらの電話へおたずねください。参加費は無料です。参加してもあなたが話したくないときは、自由に「パス」できますので、無理することはありません。

啓発イベントは、年に4,5回行っています。
 今年は、宮崎、都城、小林で、各市町村と連携して開催しました。年明け2月には延岡で、多重債務問題を取り上げたイベントを予定しています。その他ワークショップ等も行っています。

こころが疲れた人が集まるサロンは、〜生きる意味の回復の場〜人間関係につまずいたり、生きることに疲れた人達が集まって互いに語りあう場にしたいと思っています。「人間関係に疲れてホットしたい場所」になるといいなと思っています。ただ、現在まだ準備中です。

電話相談員研修は、国際ビフレンダースが定める研修内容に従い、体験学習を中心に進めます。初期の研修はグループで行い、期間は約10週間。
その後は実習と個人指導に移りますが、初期の研修後に実習を受けていただくかどうかを決めます。
 原則として、年齢20歳以上の男女で、心身共に健康な人。特別な資格は必要なく、普通の人が訓練を受けることで、聴く力が培われます。

◆活動を通して今までで一番うれしかったことは?
 平成19年1月2日の最初の電話で、「おかげで去年死なずに済んだ」といわれたことです。死にたい気持ちが大きかった相談者が、こちらがじっくり向き合って気持ちを聴いていくことで、生きたい気持ちが少しずつ大きくなっていくことが嬉しいです。

◆どんなところにやりがいを感じていますか?
 この活動が自分たちの使命のように感じています。やらせてもらってありがとうという感じがします。“神様に感謝します”というスタッフもいます。
 今は、平成10年の不況の様子と状況が似ています。失業、リストラ、パワハラ、再就職が難しいなど・・・。自殺したいという人が増えそうな気がします。それが心配です。

◆この活動を通じてどんな事を実現したいですか?
 自殺のない社会をつくりたいです。
『リストラや生活苦で借金を重ね、多重債務となり、家庭崩壊、うつ病を引き起こし、追い込まれた先にあるのが自殺』という構図がありますが、センターに来る電話相談の約3割に経済問題が絡んでいます。現在の金銭的な問題は、遊興費で使った金銭ではなく、生活するための費用の苦しみということが問題です。ここに現在の「格差社会」の深層問題が潜んでいます。つまりは、自殺したいと思わない人にとっても生きやすい社会の実現が夢です。
“個人の経済再生プログラム”とか、“うつ病の方の復職プログラム”、“多重債務者のための低金利での貸し出しシステム”といった、人をサポートするプログラムができ、いつでも誰でも相談できる場を作っていきたいです。誰もが安心して悩める社会です。

◆5年後どんな活動をしていますか?
 孤立せず、安心して老後がおくれる社会をつくるための活動を続けていきたいと思っています。10年後くらいには実現したいですね。また普通の人が、自殺対策の協力員となって活動する人が増えて、地域力が活発化する、人任せにしない、相互扶助が出来る社会をつくっていきたいと思っています。
 また組織基盤をしっかりとし、安定的な経営とセンター機能の充実もしていきたいです。そして、安心して相談が出来る場所がほしいですね。サロンとかくつろげる場も欲しいです。危機介入のための車も欲しいですね。

◆協働事業への考え、取り組み、実績
 行政といろいろと協力しながらやっています。宮崎県からは電話相談員養成と遺族支援、宮崎市からは日曜の電話相談を委託され、都城市からは、自殺予防講演会、延岡地区自殺対策協議会とはイベントの共催など、県の取り組み、各市町村の実情や要請に合わせて、協力体制を取ります。
 宮崎県社協からは、ボランティア人材育成体験プログラム開発の助成金を頂いてます。
 9月には、自殺防止マンスがあり、県から5日間、昼間の電話相談の委託を受けました。
 行政には、いろいろな相談窓口がありますが、よろず相談になっている場合が多く、自殺に特化した相談対応は難しいと思います。特に夜に受け付けるということが行政ではできないのではないでしょうか?そこを我々が引き受けているような気がします。
 今後はさらに実績を積み、いろいろな提案を行政にしていきたいと思っています。

◆最後に一言PRを
 ボランティアの不足や活動資金の不足が一番の課題です。活動を実践するボランティアをいつも募集しています。専門家ではなく普通の人が訓練を受けてボランティアになります。年に2回〜3回ボランティア養成訓練を開催しますので、関心のある方は、ホームページをご覧になるか、FAX0985−77−9222に連絡先を明記して送ってくだされば、養成訓練の日程が決まり次第、お伝えします。
 また活動に賛同して、寄附をしていただける方も広く募集していますので、よろしくお願いします。
一人で悩まないで相談してください。人に話すことでこころが楽になることもあります。秘密は守ります。電話代はかかりますが、相談費用は無料です。

〜お問い合わせ・連絡先〜

 NPO法人 国際ビフレンダーズ宮崎自殺防止センター
 理事長    三山吉夫
 センター所長 甲斐妙子
 住所  宮崎市内
 電話  0985-77-9111
 FAX  0985-77-9222
 ブログURL  http://www3.ocn.ne.jp/~spcmiya/

ライターズEYE
 取材に行ったのは、ある雨の降る寒い夜でした。8時近くになると、ボランティアの方々が集まって見えて、手馴れたかたちで電話の場所に座りました。
 8時になり、しばらくして電話が鳴ると、こちらも緊張感に包まれました。話の内容は分かりませんが、緊迫した内容であることは推察できました。
 厚生労働省の調査によると、県の自殺者数は1997年から毎年300人を超えています。昨年の人口10万人当たりの自殺率は34・6人で、秋田県(37・5人)に次いで全国2位になってしまっています。また自死遺族は、社会の偏見や無理解から孤立することが多く、心理的、経済的な支援が不十分な現状です。家族が自殺すると、配偶者や子どもが後を追って自殺する例は少なくなく、遺族の支援は自殺防止策としても不可欠です。
 緊張を強いられる業務で、これをボランティアでやっているその使命感に深く感動しました。多くの方にこの実情をしってもらい、多くの方々の協力が欲しいと思いました。
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